踊り出しそうな紅葉。仁田峠で出会った不思議な秋

仁田峠へ向かうと、今年の紅葉はいつもと少し違って見えました。色づいた木々は静かに散り際を待つのではなく、今にも踊り出しそうな勢いがあって、山全体がふわっと揺れて見える不思議な秋。雲海のような白い雲が紅葉を隠そうとする瞬間もあり、その薄いベールの向こうから赤や橙がぽっと透けるたびに、秋が“まだここにいるよ”と手を振っているようでした。そんな景色の中で出会ったのが、季節外れのみやまきりしま。枯れた枝のあいだから明るいピンクの花が咲いていて、11月とは思えない春の名残。弱さはなく、むしろ「まだ終わらないよ」と語りかけるような力強さがありました。秋と春が同じ枝で重なるなんて、仁田峠は本当に不思議で美しいところです。お昼は雲仙でビーフシチューを。ほろっとやわらかいお肉に濃厚なソースが絡んで、山のひんやりとした空気の中で食べると、いつもより味わい深く感じられました。帰り道に見た紅葉は先ほどの躍動感とはまた違って、街に寄り添うように静かに色づいた秋。風がすっと抜ける穏やかな気配で、この季節がそっと深まっていくような優しさがありました。同じ日に見たのに、こんなにも表情が違う秋に出会えるなんて。勢いのある秋、隠れようとする秋、静かに寄り添う秋。季節の境目がふわっと混ざり合う一日で、心がふっと動かされた気がします。

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